僕が子どものころ、俳優の石坂浩二さんがテレビでこんなことを言っていました。
「ダイナマイトって、食べると甘いんですよ。」
この言葉が、なぜかずっと心に残っていました。
2002年、二度目の世界一周ひとり旅での出来事です。
南米ボリビア、標高4000mに位置するポトシの街。その街を見下ろす鉱山「セロ・リコ」では、見学ツアーが行われています。

ポトシの街と、鉱山セロ・リコ

セロ・リコからポトシの街を望む
見学を終えて坑道から地上に出たところで、ツアーの最後にダイナマイト爆発のデモンストレーションがありました。ツアーガイドのおばちゃんがダイナマイトを丸め、導火線に火を付けると、大きな音とともに爆発します。まるで戦隊ヒーローモノのような世界です。

ダイナマイトの爆発
その瞬間、僕はふと、冒頭の石坂浩二さんの言葉を思い出したのです。
「ダイナマイトは本当に甘いのかな?食べてみよう!」
そんな好奇心に駆られて、早速ダイナマイトを少し食べてみますが、味は甘くない。むしろ酸っぱいのです。「石坂浩二め、嘘ついたのか」と思いました。
同行していた日本人バックパッカーが僕の行動に驚いて、ガイドに「ダイナマイトは食べられるの?」と聞くと、「もちろん食べられる訳がない」とのことでした。もう食べてしまいました。
後になって調べてみると、ダイナマイトの主成分であり、心臓の薬にも使われるニトログリセリンは、甘味があるのだそうです。つまり、石坂浩二さんが嘘をついていたわけではなかったのです。おそらくニトログリセリン以外の添加物などの影響で酸っぱかったのでしょう。